生まれつき子どもの片耳が聞こえない・おたふく風邪で子どもの片耳が聞こえなくなった。このような悩みを抱えておられる親も多いはずです。
突発性難聴や中耳炎など片耳難聴を引き起こす病気は多岐に渡り、片耳が聞こえづらくなることは決して珍しいことではありません。
しかし、片耳難聴では障害者手帳の取得基準には該当せず、認知度も高くないことから、具体的な「接し方・配慮」の方法はあまり確立されていないのが現状です。
そこで本記事では、片耳難聴の当事者である私が、数多くの片耳難聴者とお会いしてきた経験から「片耳難聴×配慮」をテーマにお話をします。
☆片耳難聴者の苦労や困りごと
☆学校や職場で周囲が協力できること
☆入試や検定等の配慮について
片耳難聴者の困りごとについて
片耳難聴者が苦手としていることは以下の通りです。
2.騒がしい場所での聞き取り
3.音の方向性や距離感の特定
上記のことが理由で、会議や授業での聞き取りが難しかったり、友達との会話に付いていけず孤独感を抱きやすくなります。
【片耳難聴者200名に聞いた】悩みBEST5【生活上の不便さは?】
また冒頭でもお伝えした通り、日本では「片耳が聞こえない程度の聴力」では障害者手帳を取得することはできません。そのため、健聴者と同様の生活が求められるため、苦労が多いのが現状です。

片耳難聴の場合、聞こえの悪い耳の聴力が90デシベル以上、そして、もう片方の耳の聴力が50デシベル以上でなければ、手帳取得の基準には該当しない。
状況別の困りごとをまとめました。
学校
☆騒がしい環境だと友達の会話が聞き取りづらい
☆席位置によって授業が聞き取りづらくなる
☆リスニングが苦手
☆複数人での会話や討論が難しく感じる
☆呼びかけに反応できず、友達から「無視された」と誤解される
☆チームスポーツの際、指示を聞き逃してしまう
職場・仕事
☆障害者手帳に該当しないため、一般枠で就職をする必要がある
☆会議での聞き取りに苦労する
☆騒がしい環境では聞き取りが難しい
☆お客さんに対して必要以上に聞き返してしまう
☆名前や指示内容の聞き間違い
☆飲み会の席位置に困る
☆聞き取れるか不安なため、質問を怠ってしまうことがある
日常生活
☆音の方向性が分かりづらく、乗り物にぶつかりそうになる
☆聞き返すことに躊躇し、分かったふりをしてしまう
☆車や電車などの座席の位置に困る
☆着信音の場所が特定しにくい
☆支援や補助が少なく、補聴器は自己負担になることが多い
☆急な呼びかけに反応できない
☆マスクを付けている人との会話に苦労する
☆飲食店やショッピングモールは騒がしいため、聞き取りが難しい

多くの場面で不自由さを感じます。周囲の協力があれば、少しは快適に生活が送れるかも。
具体的な配慮の仕方【5選】
状況に応じて方法は異なってきますが、自身の経験を元に、ここでは一般的な「配慮の仕方」についてご紹介します。
騒がしくない環境を作ろう
静かな環境では会話を聞き取れるケースも多いですが、騒がしい環境になると、聞き取りのハードルはかなり上がります。
会話をする際には、テレビや音楽、車や雨などの雑音が少ない環境で話しかけてあげましょう。
特に学校においては、周囲が騒がしいと授業の聞き取りが難しく感じることもあります。
学校や先生にお願いし、窓を閉めたり、机や椅子の脚にテニスボールを付けるなどをして、できるだけ雑音を感じにくい環境を作ってあげることが大切です。

雑音を少なくすることで、かなり聞き取りが改善されます。
席位置・立ち位置を考慮しよう
片耳難聴の場合、左右の聴力に差があります。聞こえの良い耳側からの聞き取りには、さほど苦労しませんが、難聴の耳側からの呼びかけや会話には苦労します。
特に座席・立ち位置の問題は日常生活で遭遇する場面が数多くあります。
食事・車・電車・バス・学校での席順・会議・友達と道を歩く時・映画館・飲み会・病院の待合室など、生活の多くの場面で遭遇します。
家族での食事の際や学校での席順には特に気にかけ、なるべく負担の少ない席位置を確保してあげることが大切です。

右耳難聴なら右端。左耳難聴なら左端を好む。
名前を呼んでから話をしよう
片耳難聴の大きな特徴として、「音の方向性や距離感が分かりづらい」ことが挙げられます。
これは聞こえの良い耳にしか十分に音が入ってこないことで起こります。
家・学校・職場など、全ての場面において言えることですが、急に呼びかけるのではなく、一度名前を呼んでから話をし始めると、会話がしやすくなります。
いきなり話しかけると反応できないこともあり、「無視された」と誤解を招くことにもつながるため、名前を呼んでから話すのが効果的です。
正面から話をしよう
顔を見て、ゆっくりと大きな声で話をすることで、聞き間違いを減らすことができます。子どもが片耳難聴である場合は、特に意識すること大切です。
相手の顔を見ることで、口の動き・表情からも相手の伝えたい意図や内容を感じることが可能です。同時にお互いに聞き返しあえる関係を作ることも大切です。
本人に聞いてみよう
難聴の程度にも差があるように、聞こえ方も人それぞれです。また難聴になった年齢や原因・生活環境によって、配慮の仕方は異なってきます。
本人が困っていないか。孤独を感じていないか。その気持ちに寄り添ってあげることも大切です。
片耳難聴の場合、聞き取れるケースも多いため、相談をしたり、周囲に打ち明けることに抵抗を感じる方も多いです。本人に直接聞いてみることも、とても重要な配慮の一つです。
受験や英語の検定における配慮
障害者手帳を所持していなくても、受験やTOEICなどの検定では特別な申請を行うことで、配慮を受けることが可能です。
【例】英検(受験上の配慮対応一覧)
☆座席位置⇒スピーカー近くに座席を配席して受験します。
☆口話(二次試験の1級から3級のみ)⇒通常通りの面接を行いますが、面接委員からの質問や指示は、聞こえの状態に合わせて、ゆっくりはっきり大きめな声で行います。
【例】大学入学共通テスト(元センター試験)
該当するものにチェックを入れましょう。(一部省略)
□座席を前列に指定
□補聴器又は人工内耳の装用

試験ごとによって、配慮の仕方に多少の違いがある。
ほとんどの試験や検定では、障害者手帳に該当しなくても、このように配慮を受けることが可能です。特に受験などの重要な試験の際には、利用するのが良いと思います。
配慮を希望するにあたって、医者の診断書の提出が必要になります。健康診断のデータのみでは受付できないことが多く、また有効期限も設けられているため、前もって必要書類を準備するようにしましょう!
※受験の種類により内容が異なります。詳しくは各ホームページ等で確認してください。
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